憐れみはあとで

D.E.ウェストレイク/早川ミステリ文庫

高村薫さんの『マークスの山』を読んだとき、ふと思い出して再読したくなって、
物置を探しまくってしまった。

1964年発表の、今でいうところのサイコ物。
初めて読んだとき、すごく新鮮さを感じて、何度となく読み返した覚えがある。
今になって再読してみると、この時代にすでにこの手の作品が描かれていたことが、
驚きかもしれない。
アメリカでは解離性同一性障害(多重人格者)という症例がすでに認知されてはいたが、
理解にはいたっていない、という状況で書かれたのが本書らしい。
時代を先取りしすぎたためか、今のサイコ物と比べると少し物足りないが、切り口は鋭い。

まるで水を得た魚のように、生き生きと他人を演じる犯人が、深奥に抱える罪の意識。
「殺したくないのに」と、彼の本能は助けを求めている。
犯人のそんなメッセージを感じながらも、誰も彼を救えない。
連続殺人犯という言葉が持つイメージとは、何かそぐわない孤独な魂が哀しい。

作者D.E.ウェストレイクは、
ドナルド・E・ウェストレイク(映画『ビッグ・マネー』『グリフターズ/詐欺師たち』などの原作)、
『悪党パーカー・シリーズ』のリチャード・スターク、
『刑事くずれシリーズ』のタッカー・コウなどの別名義で多くの作品がある。


*ここの本の感想は一口メモ程度。
詳しい書評は【快楽読書倶楽部】へどうぞY
[PR]
by sumika_meimu | 2006-02-27 23:02 | 快楽読書小倶楽部
<< 『ブロークバック・マウンテン』... とりのおりんぴっく- 尋ね鳥…... >>