リヴィエラを撃て(上・下)

高村薫/新潮文庫

1993年度の日本推理作家協会賞、並びに日本冒険小説協会大賞を受賞した作品。
冷戦時代の国際政治の裏側を暗躍する西側諸国の諜報活動を舞台にしたミステリ。

国際国家、組織などのいろいろな思惑が交錯する。
それらに翻弄される人間の愚かさ、無力さ、哀しさ。多くの血が流れる。
綿密な設定のなかに垣間見える圧倒的な精緻さ、複雑な社会背景と人間関係が、
緻密な文章で組み立てられていく。

どうしようもない現実に翻弄され、恋人の面影を追いながらも、
暗闇に生きるしかなかったジャック。
そして、ジャックを中心に展開する人々の、魂が呼び合うかのような
濃密な男たちの関係は繊細でドラマチックだ。

運命に翻弄されたジャックとノーマン・シンクレアの関係が、もどかしく、
そして息苦しいほど切ない。
作中で繰り返し登場する「ブラームスのピアノ協奏曲第2番」のメロディとともに、
ビショップスゲートの露天商でジャックの叫び、「ノーマン!」がいつまでも胸に残響する。
胸の底にどっしりと重く冷たい余韻が沈み込んでいく。

IRA(アイルランド共和軍)、CIA(米国中央情報局).、MI5(SIS/英国情報局保安部)、
MI6(セキュリティ・サービス/英国情報局秘密情報部)といった、
ややっこしい名称がぞろぞろ出てくるので、もしかしたら苦手な方もいるかと思うのだけど、
とにかく、ぜひ最後まで読んでほしい。
そうするだけの価値はある作品である。

以下余談
前回の小倶楽部('06/2/2)のブログで書いたように、
高村薫作品では、私には一番読みやすい世界だったにもかかわらず、レビューには苦戦。
一時期、自分がIRA関係の本を乱読していたこともあって、
思い入れが深くなってしまったのかもしれないが、
今回はこの作品を語るための言葉が足りない、と痛感してしまった…あうあう。



*ここの本の感想は一口メモ程度。
詳しい書評は【快楽読書倶楽部】>高村薫へどうぞ。
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by sumika_meimu | 2006-02-16 20:25 | 快楽読書小倶楽部
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