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クリスマスに少女は還る

キャロル・オコンネル著/創元推理文庫

クリスマスも近いある日、アメリカの田舎町で2人の少女が誘拐される。
地元警察から特別捜査官に抜擢された刑事ルージュは、15年前に双子の妹を誘拐され、
やはりクリスマスに殺されるという過去を持っていた。
だが、犯人は今も刑務所の中にいる。彼は本当に犯人だったのか。
一方、監禁された少女たちは奇妙な地下室に潜み、脱出の時をうかがっていた。
猟奇的な連続殺人犯はいったい誰なのか。そして、少女たちは救出されるのか。

映像的な美しさ、登場人物たちの心理描写、ストーリー進行のスピード感など、
ミステリという要素をしっかりと盛り込んだ作品である。
そして、あまりにも意外な結末。
この結末が賛否両論となり「問題作」とされているらしいのだが、
私自身は物語の必然として納得したし、切なさに泣けてしまった。

変則的な視点の積み重ねによる表現力。
丹念に物語を織り上げていくストーリーテリングもあるが、人物設定とその描写がいい。
特に、誘拐される2人の少女は特筆もの。
自分たちが置かれている状況を冷静に判断する精神力。
ホラーオタク少女サディーの、友を庇い、いたわる力強さ。
「あたしにあんたを置いていけるわけないでしょう?」

自分一人で逃げるのではなく、共に生還しなければ意味がない。
そして、この言葉こそが、物語を衝撃と感動のエピローグへと導いていく。

登場人物が多いせいか、中盤、ストーリーが拡散して少々中だるみを感じるが、
このエピローグのためにこそ、この道程はあったのかと思わせるような、
とても切なく、残酷、そして美しい聖夜の奇跡だ。


*ここの本の感想は一口メモ程度。詳しい感想は快楽読書倶楽部へどうぞ。
by sumika_meimu | 2006-01-21 23:06 | 快楽読書小倶楽部
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